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東京地方裁判所 平成4年(ヲ)1215号 決定 1992年10月21日

当事者 別紙当事者目録記載のとおり

主文

一  引渡命令の執行までの間、別紙物件目録記載の建物に対する相手方らの占有を解いて、東京地方裁判所執行官に保管を命じる。

二  執行官は、その保管に係ることを公示するため、適当な方法をとらなければならない。

理由

一本件は、買受人のための保全処分として、主文記載の命令を求める事件である。

二記録によれば、次の事実が一応認められる。

(一)  申立人は、平成四年九月一七日、別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)につき、売却許可決定を得て、差引納付の申立をした。当裁判所は、平成四年一〇月八日、配当期日を平成四年一一月一〇日と指定した。

(二)  相手方株式会社○○企画(以下「相手方○○企画」という。)は、本件建物の所有者である相手方五州株式会社に対して債権を有しているとして、本件建物につき、平成三年六月六日受付で、期間三年、賃料一か月一平方メートル当たり一〇〇円、譲渡転貸可の特約付の、賃借権設定仮登記を経由している。相手方○○企画は、本件建物を西村総業事業社こと相手方Kに管理させている。

(三)  相手方○○企画は、本件建物をその従業員の宿泊所として使用、占有している。

(四)  相手方○○企画の代表者は、暴力団関係者と関係のある者であり、Kも暴力団関係者である。

(五)  本件建物の隣地にある相手方五州株式会社が所有する建物についても、競売開始決定がなされ、相手方○○企画が賃借権を有しているとして、相手方Kが管理していたが、売却実施命令が発せられた後、最近に至り、同建物の玄関ガラス戸に「住吉会西井会中島組 K 無断立入禁止」の張り紙が貼付された。

三上記認定の事実によれば、本件相手方らは、本件建物の引渡を困難にする行為をするおそれがあるというべきである。すなわち、相手方らは、本件建物を執行妨害目的で占有させ、あるいは占有を始めた者であるところ、最近に至り、相手方Kが、本件建物に隣接する競売建物について、ことさら暴力団が占有している旨の表示をしたものであり、このような状況に鑑みれば、本件について、相手方らは、引渡命令の執行までの間に、本件建物の占有者を転々と代えることにより引渡命令の執行を困難にし、あるいは、買受人の任意の明渡の請求(引渡命令の発令前及び発令後)や引渡命令の執行に際しての執行官の任意の明渡の催告に対して、正当な理由なく応じず、またはこれに対して妨害行為をするなど、事実上本件建物の引渡を困難にするおそれがあるといえる。

なお、申立人は売却代金につき差引納付の申出をし、当裁判所はこれを認めて、代金納付期限の指定をすることなく、配当期日の指定をしたものであるが、この場合、執行裁判所は、買受人たる本件申立人に対し、代金を納付させることなく、保全処分を発令することができると解すべきである。なぜなら、民事執行法七七条が、買受人の代金納付を保全処分の発令要件とした趣旨は、代金を納付する意思のない競売ブローカー等が、本条の保全処分(特に執行官保管命令)を得て、所有者に明渡しや買い戻しを強要し、不当な金銭を得るといった濫用を防止することにあるが、差引納付が認められる買受人は、あらかじめ配当財団を確保しなくとも、配当実施時に差引額が納付される蓋然性が高い者であり、このような濫用のおそれはないといってよいからである。

四よって、本件申立は理由があるからこれを認容し、申立人に相手方らそれぞれに対して金一〇万円の担保を立てさせたうえ、民事執行法七七条一項(同法一八八条)に基づき、主文のとおり決定する。

(裁判官松丸伸一郎)

別紙当事者目録

申立人 三井不動産ファイナンス株式会社代表者代表取締役

梅田健一

申立人代理人 弁護士松田耕治

同 弁護士溝口敬人

相手方 五州株式会社

右代表者代表取締役 村田修

相手方 株式会社○○企画代表者代表取締役 T

相手方 西村総業事業社こと K

別紙物件目録

(一) 所在 東京都港区南青山四丁目二三七番地

家屋番号 二三七番一

種類 居宅

構造 木造亜鉛メッキ銅板瓦交茸平屋建

床面積 16.48平方メートル

(二) 所在 同所同番地

家屋番号 二三七番二

種類 居宅

構造 木造亜鉛メッキ銅板茸弐階建

床面積

壱階 55.84平方メートル

弐階 55.84平方メートル

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